労働者災害補償保険、通称「労災」について、分かりにくいのでわかりやすくまとめてみました。
労災は、勤務中の事故・けが、通勤中の事故・けがが含まれます。
労災として病院で治療を受けた際、[5号様式」や「7号様式」、複数の病院で診察した場合「6号様式」が必要など言われます。けがした人(傷病労働者)にとっては、何のことかさっぱりわかりませんよね。
労災の手続きは傷病労働者本人ではなく、事業者側が書類を作成するケースが多くあります。労災事体頻繁に起きることではありませんので、書類作成の仕方を忘れたり、どの様式が必要かわからなくなったりしますよね。そんな事業者側に向けた記事です。
労災の2つの種類
労働災害にも業務上にけがなどをした、業務災害と通勤中などのけがをした通勤災害の2つがあります。労災として扱われるには一定の条件がありますので、
業務災害
業務災害は、厚生労働省により下記のように定められています。
業務災害とは、業務上の事由による労働者の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「傷病等」といいます。)をいいます。
業務上とは、業務が原因となったということであり、業務と傷病等との間に一定の因果関係があることをいいます。
業務災害に対する保険給付は、労働者が労災保険の適用される事業場(法人・個人を問わず一般に労働者が使用される事業は、適用事業となります。)に雇われて働いていることが原因となって発生した災害に対して行われます。
引用:厚生労働省
業務災害の条件はこのようになっています。業務中に業務をしているときにけがをした場合は適用します。しかし業務中であっても、業務外のことでけがをしても保険は適用しませんよ、ということです。
通勤災害
通勤災害とは、通勤による労働者の傷病等をいいます。
この場合の「通勤」とは、就業に関し、○ア 住居と就業の場所との間の往復、○イ 就業の場所から他の就業の場所への移動、○ウ 単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとされていますが、移動の経路を逸脱し、又は中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の移動は「通勤」とはなりません。ただし、逸脱又は中断が日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、逸脱又は中断の間を除き「通勤」
となります。
引用:厚生労働省
通勤災害の条件は、このようになっています。
要するに、通勤通路上であれば、日常用品など購入に立ち寄っても元の経路に戻れば通勤災害として認めますよ。と、いうことです。ただし、長時間のサークル活動など、厚生労働省が中断・逸脱と認めない場合もあるということを理解しておいてください。
必要な書類と様式の種類
傷病労働者や事業主が気になるのはここからですよね。事業者にとっては、今後どういった手続きが必要か不安ですよね。
傷病労働者にとっては、今まで通り給与がもらえるのか?どういった保証があるのか?どういった手続きをしなければならないのか?わからないですよね。
それぞれの状況に応じた必要な書類をご説明します。
5号様式 療養補償給付たる療養の給付請求書
これは、勤務中にけがや事故にあった際、労働労災指定病院を受診したときに必要となります。労災指定病院とは、労災で診察したときの治療費を病院側が立て替えてくれる病院です。事業者側は病院に5号様式を提出し労働者の治療費を厚生労働省から払われる仕組みになっています。
事業者側は、5号様式を病院に提出する必要があります。
7号様式 療養補償給付たる療養の給付請求書
これは、勤務中にけがや事故にあった際、労働労災指定病院以外の病院を受診したときに必要となります。労働災害指定病院以外の病院は一般的な病院の事です。診察を受けたらお金を払う病院です。
傷病労働者は、診察を受けた際病院に一旦治療費の支払いをします。その後、7号様式を労働基準監督署に提出し、厚生労働省から治療費の返金を受けることができる仕組みになっています。
5号様式・7号様式は勤務中の災害で発生した治療費の請求の様式です。違いは労災病院かそうでないかの違いです。
16号様式の3 療養給付たる療養の給付請求書(通勤災害)
通勤中の事故・けがをした場合、労災指定病院を受診したときに必要になります。5号様式と同じく労災指定病院ですので16号様式の3は病院に提出する必要があります。
16号様式の5 療養給付たる療養の費用請求書(通勤災害)
通勤中の事故・けがをした場合、労働災害指定病院以外を受診したときに必要になります。7号様式と同じく労働基準監督署に提出する必要があります。
6号様式 療養補償給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届
傷病労働者が病院を変更する際に必要になります。1つ目の病院を受診したが、打撲と診断された。翌日も痛みが出たので別の病院を受診して骨折と診断された。セカンドオピニオンのの場合です。そのほか、1つ目の病院では治療できないため別の病院を紹介された時などが該当します。
6号様式は、病院を経由して労働基準監督署に提出をします。
23号様式 労働者死傷病報告
傷病労働者が4日以上休業する場合に必要になります。休業見込みがある場合は、労働基準監督署に速やかに提出します。
24号様式 労働者死傷病報告
24号様式は、23号様式の簡易版になります。3カ月以内起きた、労災をまとめて報告することができます。労働者の休業日数が1日~3日の人を対象が対象になります。
この報告は、複数人まとめて死傷病報告ができるので楽です。
8号様式 休業補償給付支給請求書・休業特別支給金申請書
8号様式は、休業した日の翌日から2年以内で給付金の請求ができます。休業1日から3日までは会社が保証することになっているので、4日以上休業した場合労災補償を受けることができます。。1か月ごとに労働基準監督署に請求する必要があります。
タイムカードや賃金台帳等、会社から給与支払いの実績がないことを証明しなければなりません。
16号様式の6 休業補償給付支給請求書・休業特別支給金申請書(通勤災害)
申請内容は、8号様式と同じものです。業務災害ではなく通勤災害時に必要となる書類です。これも同等にタイムカートや賃金台帳等の会社から給与の支払い実績がないことを証明できる書類が必要になります。
主にこのような書類が必要になります。
死亡したり後遺症が残ったりすると遺族給付・葬祭給付や障害給付などの支給申請を行うことができます。
余程の重大な事故が起こらない限りこの申請書は作成することがないと思いますので、もし作成することがある場合は、労働基準監督署に直接問い合わせしてみるのがよいかと思います。
まとめ
災害 | 様式 | 届出が必要な状況 | 届出先 | 提出期限 |
業務 災害 |
5号様式 | 勤務中の労災 労災指定病院 | 病院 | 速やかに |
7号様式 | 勤務中の労災 労災指定病院以外 | 労働基準監督署 | 速やかに | |
8号様式 | 傷病労働者が労務不能となり賃金を受けることができないとき(4日以上休業) | 労働基準監督署 | 休業した翌日から2年以内 | |
通勤 災害 |
16号様式の3 | 勤務中の労災 労災指定病院 | 病院 | 速やかに |
16号様式の5 | 勤務中の労災 労災指定病院以外 | 労働基準監督署 | 速やかに | |
16号様式の6 | 傷病労働者が労務不能となり賃金を受けることができないとき(4日以上休業) | 労働基準監督署 | 休業した翌日から2年以内 | |
共通 | 6号様式 | 病院の変更届 | 変更後の病院 | 速やかに |
23号様式 | 傷病労働者が4日以上休業した場合 | 労働基準監督署 | 速やかに | |
24号様式 | 傷病労働者が1~3日休業した場合 | 労働基準監督署 | 3カ月以内 |
頻繁に労災が起こるわけではないので忘れないようにまとめました。
一番は、こういう書類を作らないでいいような安全な会社が一番いいですね。
書類も作らなくていいし、労働者が安全に仕事ができる。これに、越したことはないですね。